薪ストーブで気になる薪の使用量。どれくらい使うものなのか…カタログの数値を見てもどうもしっくりこない方多いと思います。今回は自分の勉強も兼ねて時間ごとの薪の投入量・室内外気温・ストーブ温度を測定してグラフ化してみました。そこから見えたものとは…
気になる結果は…
薪ストーブの方が圧倒的に安い!!
※我が家のパネルヒーターとの比較ですので、全ての状況に当てはまるものではありませんのでご注意を!!あくまでも「我が家」での実験結果です。
とある1日の消費量をデータ化して、そこからちょっとした考察と結果などは簡単なレポート形式にまとめてみました。
目的
現状では自作薪で全ての燃料を賄うのは難しいことから、必然と購入する事になる。即ち、薪の消費が減ればその分だけ自身の懐が暖かくなる(ストーブだけに)事に直結する。そこで、自身の薪ストーブの適切な運転状況を把握し、運転効率を上げる事で最もコスパに優れる運転方法を模索するため、その第一段階として概要の把握を行う事とした。また、実際に電気暖房と比較し実益を兼ねているのかを確かめる基礎実験とする(適当)
実験材料
<薪ストーブ>
・メーカー:JOTUL
・型番:F163
・最小出力:3.7(kW) 3,182(kcal/h)
・定格出力:5.0(kW) 4,300(kcal/h)
・最大出力:9.0(kW) 7,740(kcal/h)
・暖房面積:84(㎡) 51畳
・試験データ:82%・出力5.9kW
・投入量の目安:1.6(kg/h)
<温度計>
・無印良品デジタル温度湿度計
・JOTUL製天板温度計
<計り>
・伝統ある20数年前の計り
<場所>
・我が家:札幌の緑豊かな地区
・住宅面積:約144㎡(約88畳)
・木造二階建て吹き抜けあり
・24時間熱交換型換気
・断熱は普通!(たぶん)
<概況>
・2018年11月24日
・今シーズン一番の冷え!
・外気-3℃〜1℃
<薪>
・シラカバ、ナラ、ハンノキ
・重量は自宅の計りで計測
・0.5kg=±100g
・1.0kg=±300g
・1.5kg=±300gにて設定
実験方法
2018年11月24日、ニュースでも今シーズン一番の寒さと評判の日。寒いし天気も優れない為、自宅に引き篭もる口実を作り管理人が実行。30分ごとにソワソワする私を、妻と息子は怪訝な様子で観察していたがメンタルを強く持ち今回の実験に臨む。
薪の投入時では、投入30分間は空気調節レバーを最大で固定。投入から30分後調節レバーを60%ほど押し込み計測を行った。
<温度>
30分ごとにストーブ天板の中心温度・リビングの気温・札幌お天気ねっとにて地区の外気温を目視にて測定。尚、室温は22℃前後を保つように運転した。
<重量>
薪を焚べる直前にそれぞれの薪を計りに乗せ目視にて測定。多少のばらつきがある為それぞれに±100g〜300gの幅を設け、0.5kg/1.0kg/1.5kgとし重量単位を設定した。
温度上昇率:ピーク時温度とその30分前の温度を計測し上昇率とした。
温度減衰率:ピーク時温度と1時間後の温度を計測し減衰率とした。
結果

07:30〜23:30の16時間の中で、薪を追加したのは焚き付けを除いて9回。焚き付けを含めた薪の使用総重量は26.5㎏、平均すると1時間あたり1.66㎏を使用。室温は07:30で18℃であり、天板温度200℃前後で運転したところ5時間後の12:30時点で22℃に到達、1時間あたり0.8℃の上昇となった。
また、各薪投入において投入時の温度上昇速度よりも、ピークを迎えてからの温度低下速度の方が緩やかな温度変化となった。


A:合計投入重量→2.5㎏
(40%シラカバ:60%ナラ)
・投入時温度:150℃(12:30)
・ピーク温度:250℃(13:00)
・1h経過温度:180℃(14:00)
※温度上昇率166.7%
※温度減衰率28.0%
B:合計投入重量→2.5㎏
(100%ナラ)
・投入時温度:200℃(15:00)
・ピーク温度:240℃(15:30)
・1h経過温度:200℃(16:30)
※温度上昇率120.0%
※温度減衰率16.6%
C:合計投入重量→2.5㎏
(20%シラカバ:80%ナラ)
・投入時温度:170℃(17:00)
・ピーク温度:220℃(17:30)
・1h経過温度:200℃(18:30)
※温度上昇率129.4%
※温度減衰率9.1%
木種による温度変化

薪ストーブは常に温度変化していたり、外気や熾の量でなかなか標準化されたデータは取れませんし、一回だけのデータで物を見るのは…と堅苦しい話は置いておきます(笑)
今回のデータを取ったABCでは同じ2.5㎏の薪を投入し、それぞれで木種の比率を変えてみました。
その結果、温度上昇比率と減衰率に差が出ていて、Aは最も上昇率が高く減衰率も最も高い数値がでました。Bは上昇率が一番低く減衰率はCより高い数値となり、Cは最も減衰率が低い数値となりました。この結果を踏まえると事前情報や体感通り…
シラカバ:短時間で温度を上げるときに有用。反面ピーク後の温度はナラに比べて下がりやすい。焚き付けや温度が下がりすぎた際に使うと良い。
ナラ:熾が残り火力が続く。メインで焚べていく木種として好適。
と、いった事は間違い無いように思えます。これは自分の覚書みたいなもので、次からが本題です。
電気代より安いのか。
F163のスペックでは1時間あたりの薪の投入量目安が「1.6㎏で定格出力が5kW」です。今回計測してみても、全16時間の計測で26.5㎏の薪を使用した事から平均して1時間あたり1.66㎏、焚き付けを除いた15時間では22.0kgの使用ですから1時間あたり1.5㎏の使用です。
この事から考えても当実験の薪の使用量は、公式スペックに則った状況であったと言えます。つまり、定格出力の5kWの定格出力で外気温が−3℃〜1℃の冬期において、室温を22℃前後に維持出来る状況です。
こうして数値で見ると、断熱性にこだわって建ててはいませんが北海道の住宅なので基本値が高めなのでしょうね。ありがたや。
また、1時間あたり5.0kWの出力(F163の定格出力)の使用を行なっていて、我が家は室温22℃前後を保ち暖かい状況です。すなわち、暖房能力として5.0kwのパネルヒーターを稼働させている状態と同等と仮定できます。逆を言えば我が家を温めるために、暖房出力として5kWは必要であるとも言えます。
その5kWを基準として、使用量からみた使用料金を試算してみました。
なお、我が家のパネルヒーターは出力が600W〜1.8kWまで様々あり、暖房能力(kW)と消費電力(kW)がイコールのものが設置されています。そこから試算を行なっています。
【薪の暖房費】
5.0kWの使用に必要な薪の重量→1.6㎏
1立米約820㎏≒25,000円
1キロあたり「30.5円」
1時間あたりの暖房費は「48.8円」
当実験の16時間の場合「780.8円」
30日使用した場合23,424円
【電気の暖房費】
電気契約:ホットタイム22ロング
基本料金約6,400円、1kWあたり「15.1円」
5kW=1時間あたりの暖房費「75.5円」
当実験の16時間の場合「1,208円」
30日使用した場合42,640円
※パネルヒーターの情報が載っているサイトをみると「1ヶ月の電気使用料12,000円」等の記載がありますが、あれは「一基分」です。我が家には総数12個のパネルヒーターが設置してあり、戸建ての住宅を一基のパネルヒーターだけで温めるのは、なかなか難しいですから、数カ所のヒーターを稼働させる事になります。
電気の方が2倍近い試算。
※再度注意※
これはあくまでも「我が家の暖房設備(パネルヒーター)」と比較した場合です。必ずしも電気より安くなるわけではありません。順を追って説明をしていきます。
初めて比較しましたが結構違いますね…。
実際の薪の消費量はこちらの記事でまとめていまして、そちらの消費量と今回の1ヶ月あたりの消費量がほとんど同じ数字なので、自分としては納得の数字です。
自分の薪ストーブがカタログ上に定格出力や、投入重量の記載があっても「自分がどれくらい使っているかわからない」状況でして、なんとなくでも良いから「定規」が欲しかったのです。結果、ぼんやりとした定規ではありますが1時間あたりの投入重量がカタログ値と近い事で、当実験では概ね定格出力で運転できていると仮定できたわけです。
そこからの試算ですが、現在の北海道電力との契約では1kWあたり15.1円での従量課金で、実はこれで安い方です。現在では申し込み出来ないプランになっていて、現在加入できるプランでは20〜30円前後になっています(差があり過ぎませんかね…)。
では逆に電気代がどれくらいの金額になると薪と同等なのかというと…
9.8/円kW
う〜ん…10円切るくらいの利用料金ですね。こんな日がくるとは思えません。我が家の年間の薪使用量が約8立米、金額では20万円です。といっても私は自作薪も手配していますので、それを合わせて計算すると8立米(年間暖房費)の金額は12万5千円前後になります。これら暖房費全てを我が家のパネルヒーターで賄おうとすると約33万円の計算になり、2倍以上の使用料という試算になってしまいます。
と、いってもこれは我が家の暖房効率の悪いパネルヒーターと比較した場合です。最近ではヒートポンプ式のエアコンも出ていて、とても暖房効率が良いものが出てきました。
最新エアコンには負ける。
最初に言っておきます。電気暖房に関して記載しているサイトが多くありますが、結構な確率で間違った記載が多いです!暖房能力のkWと消費電力のkWを同数として計算されているサイトもありますが間違いです。暖房能力はカロリー数をkWに直したもので、機種にもよりますが消費電力とは必ずしもイコールになりません。例えば…
◇1kWあたりの電気料金:27円
◇暖房能力:2kW(2000w)
「この時の電気代は1時間で54円です!」…というのを相当見かけます。これ間違いです。あくまでも暖房能力はその「火力」みたいなもので昔はcal(カロリー)で記載されていたものです。本来必要な情報は…
◇1kWあたりの電気料金:27円
◇暖房能力:2kW(2000w)
◆消費電力:1000w ←コレです。
この場合の電気代は「27円」が正解です。たまたま我が家のパネルヒーターが暖房能力=消費電力になっていて、分かりにくさを生んでしまっていますが…電気代を計算するときに必要なのは「消費電力量の”kW”」ですのでご注意を!
さて…本題ですが最近のエアコンの消費電力の低さには驚きます。別に宣伝するつもりは無いのですが、北海道でやたら宣伝している「ズバ暖」三菱のエアコンですね、この小型モデルがちょうど我が家の薪ストーブF163と同じようなスペックで…
ズバ暖霧ヶ峰
三菱電機 ズバ暖より引用
・メーカー:三菱電機
・型番:MSZ-FD4019S(W)
・最小出力:0.9(kW)
・定格出力:6.0(kW)
・最大出力:9.0(kW)
・暖房面積:13~17畳
・消費電力:1.34kW
我が愛ストーブF163とほぼ同じ暖房能力を持っています。そこで1時間あたりの電気料金を計算すると…なんと「20.2円」。薪では「48.8円」ですから半分以下、圧倒的にエアコンが安いのが分かります。
「あ〜エアコンに変えるか…」と言いたいとかそういう考えはなく、あくまで比較を行いたいだけです。むしろ、エアコンで「あったけぇ〜」とはなりませんし、あれは「寒くない」だと思ってます。薪ストーブ推しであるのは言うまでもないでしょう(笑)
料理もできるし、お湯も湧くし、あったけ〜し、見てて綺麗だし、楽しいし、こんな実益を兼ねた物は手放せません!全薪ストーブユーザーが頷いてくれていると思います。
やっぱり薪ストーブって金額だけじゃ無いと思うんですよ…と言う、いつもの答えに帰結するわけです。薪ストーブが好きなので「薪ストーブなんてやめた方がいい!!」なんて事は家が燃えて無くならない限りないです。
手間も場所も掛かりますけど、自分には堪らない相棒です。
まとめ
- いつもの運転でF163を定格運転出来た
- 木種によって燃焼の差がある(確信)
- 投入後約30分で温度ピークをを迎える
- 先入れカバ、後入れにナラが理想
- F163では48.8円/hの暖房費になった
- 自宅の暖房設備比較は薪の方がだいぶお得
- 最新エアコンは超コスパが高い
- でもやっぱり薪ストーブ!!
今回色々調べてみて、非常に参考になりました。自分のストーブの使い方だったり、薪追加のタイミングが分かったりとメリットだらけでした。ただ、自宅のパネルヒーターの日本代理店が既に無いみたいで、保管していた昔のカタログ探したりと大変でした(汗)やはり暖房費だけで見ると、電気に軍配が上がる物が出てきていますが流石にエアコンとかヒーターに愛着は持てません。薪ストーブを設置してから単純な暖房設備…と一概に言えない価値観になってしまいました(笑)
ここまでお読みいただき有難うございます。
それでは良い薪ストーブライフを!(挨拶)