まだまだ知名度がそこまで大きくはない小樽芸術村。ステンドグラス?ニトリの所蔵品?正直あまり期待せず、新設されたというティファニーのステンドグラスギャラリーの物珍しさに行ってみました…が良い意味で大きく期待を裏切られる事に。この衝撃をあなたにも。
小樽芸術村の入館料は高い?鑑賞後はその逆の印象に。
小樽に「芸術村」と呼ばれる美術館や施設があるのはご存じでしょうか?2018年12月時点で知りませんでした。芸術村といってもさすがに村…ではありませんが
- 似鳥美術館(旧拓銀小樽支店)
- 旧三井銀行小樽支店
- ステンドグラス美術館(旧高橋倉庫)
- ミュージアムカフェ(旧荒田商会)
この4館で構成された施設の一群を「小樽芸術村」と呼びます。
先ほど“村ではない”とお伝えしましたが、鑑賞を終えた時にはそのボリュームと、多彩なジャンルの収蔵品に圧倒され「確かにこれは芸術村と言って過言ではないのかもしれない…」と感じました。
ミュージアムカフェは誰でも気軽に入館できます。入館料が発生するのはそれ以外の3館となります。その気になる入館料はこちら()内は学生料金です。【※2018年12月ねじお調べ】
似鳥美術館:1,500円(1,000円)
旧三井銀行:500円(300円)
ステンドグラス美術館:700円(500円)
単館合計:2,700円(1,800円)
〇3館共通券:2,000円(1,500円)
※入館購入の場合は隣接する駐車場が2時間無料です。
私は3館共通券を強くオススメします。
と、いうのも私は当初「3館共通で2,000円か…ちょっと高いな~。ほかの美術館の特別展でも2,000円弱だからな~」なんて考えていました。実は行くキッカケになったのが知り合いから割引券をもらった…というお恥ずかしい理由でしたが、必ず私はリピートします。その理由は…
確実に見応えがある。
からです。
順を追って訪館の感想をお伝えするので、ちょっとフライングしますがその収蔵のバリエーションはステンドグラスや美術品は勿論、それだけではなく「建造物自体」も100年近く前のもので、芸術村という存在自体が一種の収蔵品に近い感覚を覚えます。
2018年で北海道命名150周年を迎えた状況にも表れている通り、本州に比べて歴史が浅く歴史的な建造物は多くありません。しかし芸術村では小樽市指定の歴史的建造物の認定や有形文化財に認定されており、その中で鑑賞する美術品はいつも私が見てきた美術館と一線を画する雰囲気を持っていました。
あまり、美術館での入館料などで高い・安いという表現は使いたくないのですが(さっき言ってたじゃないか)小樽芸術村の3館共通券は安く感じるはずです。
実際に大きく私も横で頷きましたが、3名で鑑賞されていた60代前後のご婦人方は
「いやぁ見応えあるわ~」
「ここまでの物だと思わなかった。」
「えっ!?横山大観もあるの!?」
等々、感嘆されており私もまったくの同意見です。きっと訪館すると皆さん驚くことになるでしょう。それでは次に各館のレビューを少し触れていきます。
小樽芸術村はティファニーだけじゃない。横山大観・ガレ等盛り沢山。
あまりここで詳細にお伝えしすぎて満足される…ということはないでしょうが(笑)是非訪れるキッカケになってもらえたら嬉しいです。
似鳥美術館
まずご紹介するのは小樽芸術村のメイン展示と言って過言ではない「似鳥美術館(旧拓殖銀行小樽支店)」です。
こちらの館内では
- ティファニーのステンドグラス
- アールヌーヴォー・デコギャラリー
- 横山大観、片岡球子ら日本画勢
- 岸田劉生、ルノワール、ユリトロらの洋画
- 高村光雲らの木彫り
表現が正しいのか分かりませんが「和洋折衷」というか、芸術品のフルコースとも言えるような、似鳥氏の所蔵だからこそ実現した展示グループを鑑賞する事ができます。
これがまたトンデモナイ展示ボリュームで、正直この1館だけで2,000円以上の価値があります。そもそも、ティファニーのステンドグラスというと「特別展に数点」程度の展示なわけです。価値も価値ですし、そもそも美術品としてサイズが大きく一堂に会する機会は中々ないでしょう。
それがまぁ「ルイス・C・ティファニーステンドグラスギャラリー」と言うだけあって、展示ボリュームが半端じゃないです。大してステンドグラスに興味がなかった私でも「こりゃ凄いわ…」と感じた程です。また、音声案内も無料で貸し出ししてくれるので、展示内容を分かりやすくじっくりと堪能できるのも魅力の一つです。
ステンドグラスの展示だけではなく、英国ステンドグラスと米国ステンドグラスの違いも細かく解説されていますし、なんと当時の技法を再現して対比させるような丁寧…というより、これよく再現したな~と感心する展示もあり圧巻でした。
実際にあれだけの物をみると、ルイス・C・ティファニーがもともと教会で使われていたステンドグラスを「芸術の域」に持ち上げた。と言われて納得せざるを得ない展示内容です。また、ティファニーがステンドグラスで表現する技法も特徴的なもので、館内でそれらを学ぶことができます。
因みに似鳥美術館館内は撮影禁止ですので、写真はありません。無断撮影ダメ・ゼッタイ。
マニマニマグより引用
私、アールヌーヴォーというかミュシャがとても好きでして、自宅にはコピーですけど(当たり前)縮小印刷した「四季」や「月と星」を飾っています。ガレのランプを展示しており、その一環としてミュシャの展示もありました(重要)。※ゴッホも大好きです(どうでもいい)
ええ、あの長さ180センチ前後あるカラーリトグラフですよ、何気なく壁のポスター枠に入っているんですよね…ミュシャ展ですらこの近距離では見れなかったような、息を吹きかければ届くような場所に。
私それ見て…
「え?マジ?これ、現代復刻ポスターじゃないよね?」
と眼鏡を外して近距離で見ましたけど当時のリトグラフでして、鼻血が出そうになりました。いやはや、ミュシャの作品を常設展で見られるところがあったとは…感涙。
実は似鳥美術館は4階建てとなっており
- 1F:ティファニーステンドグラス
- 2F:棟方志功・高村光雲ら
- 3F:岸田劉生、ルノワール、ユリトロらの洋画
- 4F:横山大観、片岡球子ら日本画勢
- B1:アールヌーヴォー・デコギャラリー
と、いう構成になっていまして、これだけみてもまだ半分弱という展示ボリューム。はっきり言ってこの似鳥美術館だけでもお腹いっぱいになります。女性彫刻の力強さや、伊藤深水の美しい絵に雪を打つ繊細さ等、語りだしたらキリが無いくらい堪能できます。
本当に良い意味で、ありとあらゆるものを鑑賞できるのでニトリのCMをお借りすると「お値段以上」である事は間違いありません。
旧三井銀行小樽支店
続きまして、似鳥美術館の庭園スペースを挟んでお隣に移ります。旧三井銀行は実際に小樽市指定の有形文化財になっており、ルネサンス様式の石造りの建物です。以前は石屋製菓が管理していた様ですがニトリがそれを買い取り、建設当時の修繕方法を取り入れ外観や内装を整えています。
元銀行ともあり、なかなか入れないところですから多少の緊張感を持って入館したところ…
めっちゃ広いホール
という印象です。そりゃあ確かに、銀行の名残はあるでしょうが既にもぬけの殻状態です。なので、展示物としてはそこまで色々なものがあるといった状況ではありませんでした。(こちらは撮影OK)
が、しかし!!!
通常では中々お目にかかれない金庫の扉であったり、金庫内は撮影禁止なのですがその中に絵画の展示があります。勿論、私の写真撮影のテクニック不足でお伝えすることが難しい要所要所の「館内の意匠」は大正ロマン(建設は昭和2年ですが…)を感じる作りとなっており、館内を散策するだけでも結構楽しめました。
地下の排水溝…そんなところ見るやついるのか、という所ですが美しい真鍮のような黄金色の排水蓋であったり、タイル作りの部屋など100年近く前の銀行ですが堅牢な作りをしている事が見て取れます。一体どのような方がここを使っていたのだろう…と、昔に思いを馳せた私でした。
また、旧三井銀行ではその広いホールを活用して「プロジェクションマッピング」を上映しています。こちらを制作したのは札幌在住の「馬場ふさこ」さんという映像アーティストで、ドイツの映像祭典で特別賞を受賞された経歴を持つ方です。
東京デザインウィークやSAPPORO CITY JAZZ等ドーム状の室内にプロジェクションマッピングを行い活動されていますので、実は皆さんが見ていた作品はこちらの馬場ふさこさんの作品かもしれません。
F-L+FDA(馬場さんのサイトにリンクしてます。)
上映は30分に一回ですから、ほとんどのタイミングで見ることができますので、是非鑑賞する事をおススメします。
椅子が設けられており「これ座っていいのかな?」という立派な椅子がおいてありますので、そちらに座ってプロジェクションマッピングを鑑賞する事ができます。座りながら鑑賞していると「あ~いま観光してるな~(ほのぼの)」という感覚になる事間違いありません(笑)
ステンドグラス美術館
似鳥美術館内のティファニーステンドグラスは米国製であるのに対して、こちらは英国製が主な展示になっています。撮影は館内OKですが何故だか「自撮り棒NG」となっていました(笑)
館内は併設されたミュージアムカフェと共通の入り口となっていて、そこから入ると旧高橋倉庫を活用した木造の倉庫内での展示になっています。二階建てで所狭しとステンドグラスが並んでいます。
正直今まで大した興味もなかったですし、宗教観に乏しい私は「教会の窓についている綺麗なガラス細工」程度にしか捉えていませんでした。
しかし、この小樽芸術村の展示物群を鑑賞し「ここまでメッセージ性が高い強烈なインパクトのある広告」は例を見ないな…と感じました。宗教的な意味合いが強いので語弊を恐れずに言えば「一種のプロパガンダ」であるとも感じます。
アールヌーヴォーの影響も強いのでしょうが、ステンドグラスが持つ芸術性・装飾美と共にそれらが訴えかけるメッセージを強く感じました。恐らく見る人によっては、私が感じる以上の価値が確実にそこにあります。
まだまだ語彙が足りずうまく言葉として表現できないのですが、ステンドグラスというものを通して当時の人々が伝えたかった物を少しは感じたように思いましたし、美術品と呼ばれる物は、それらの「想い」を時間を超えて伝えるものであり、不変的な事が伝わる一種のツールであると感じました。
アクセス
営業時間
〇5~10月→9:30〜17:00
〇11~4月→10:00~16:00※入場は閉館30分前まで
休館日
〇5~10月 無休
〇11~4月 毎週水曜(祝日の場合はその翌日)
小樽運河沿いにありまして、ティファニーのステンドグラスを展示している「似鳥美術館裏」にタイムズの駐車場が16台あります。入館券を購入すればそこが2時間無料になります。※以後は30分500円ですのでご注意を。
私は3館を鑑賞して約3時間半強滞在しました。ちょっと駐車料金の事もあったので早めに回ったつもりでしたが…駐車料金1,000円掛かってしまいました。小樽観光も兼ねて行くのであれば「小樽運河倉庫駐車場」が最大料金1,500円なので、時間を気にすることなく堪能出来るかもしれません。
まとめ
- 施設は4館で構成されている
- 初回鑑賞は3館共通がオススメ
- 古今東西の美術品を一堂に観れる
- アールヌーヴォー好きにはたまらない
- 鑑賞時間2時間じゃ足りない
- 見方が変わるくらいインパクトがあった
恐るべきはこの芸術村は進化を続けているという点です。展示物の入れ替えは今後もあるようですし、様々なイベントも随時企画されています。また、場所が小樽という事もあり展示されている「ステンドグラス」や「ランプ」等の相性はバツグンです。まだまだ来館者が少ないという事でしたが、これから間違いなく注目されていく小樽の観光スポットになるでしょう。
札幌からも近く、観光客のみならず近郊からも注目されていきそうです。まだご存知ない方が多いと思いますので、この機会に是非足を運んでみてください。ほんと、その内容とボリュームに驚くこと間違いありません。
ここまでお読みいただきありがとうございます。