最初は黒々としていた薪ストーブも時間と共に少しずつ白っぽくなる事があります。だんだんと退色していくので気が付かない場合も…再塗装などの大掛かりなものでは無く、自宅にあるもので簡単にメンテ出来ます。頻繁に行うものではありませんが覚えて損なしです。
■注意
当記事は、ねじおなりの対処方法です。必ずしも全ての薪ストーブに適用できるわけではありません。また、参考にされる場合は自己責任を伴うことを予めご承知おきくださいm(_ _)m
白っぽくなるわけ
そもそも、薪ストーブの塗料とは何か…というところですがホーロー仕上げの物を除いて大半の薪ストーブが「耐熱塗装」です。簡単に言えば「スプレー塗装」みたいなものです。一方鋳物は鋳物でも南部鉄器やLODGEなどの口に入る事のあるものは「漆塗り(樹脂)」や「鉄しょう(お歯黒などに使う鉄汁)」です。
鋳物に代表される様な漆塗りでは黒々としていて、退色しないような印象を受けますがそんな事はありません。実際に漆であっても日光に晒され続けている様な環境だと「紫外線」により劣化し、微細な凹凸が生まれる事や漆自体に含まれるゴム質が増加して結果白っぽくなります。
これ自体は耐熱塗装を含め多くの塗料でも同様で、薪ストーブの塗料もそれにもれず該当します。例えば日光に晒されている鉄製品代表といえば「郵便ポスト」でしょうか。あまり「真っ赤な郵便ポスト」って見た事ないですよね?なんとなくオレンジだったり、むしろ白っぽく色が退色している物の方がイメージしやすいのではないでしょうか。
我が家のように薪ストーブと大きな窓が近く、日光に晒される様な環境であれば尚の事退色が進みやすくなっていきます。
ではなぜスキレット等では退色が気にならない、若しくは退色していない様に思えるのでしょうか?これよく考えてみてください、最大のヒントです。
[s_ad]なぜスキレットは退色しないのか
さて、みなさんお考え頂けたでしょうか。
- 適度に熱が加わっているから?
- 直射日光にそんなに当たってないから?
- そもそも調理道具だから?
正解は…
油を使っているから。
です。
え…油…?と、お思いでしょうが色々な油にはUV効果があります。
一部の植物油脂は市販の日焼け止めに引けを取らない効果があります。
Timeless Edition あるキャリアオイル(植物油)や精油の日焼け止め効果がすごい!SPF数値と使い方より引用
鋳物の調理器具では焦げ付きやサビを予防するためにも「油」の使用は必須です。
細かい話は省略しますが上の引用をみて分かる通り、油には日焼け止めの作用があります。すなわちスキレットなどは使用時・保管時において「常に紫外線対策」をしている状態になっています。結果、劣化していない様に見える、もしくは劣化のスピードが遅い状態になるわけです。
また、実際には紫外線劣化うんぬん…という以前に油でコーティングされている為、常に鉄表面を保湿(表現はあっていないと思いますが…)しており、乾燥しておらず常にお化粧をしている様な状態になっている事が大きな理由となり、黒々と買った当初の趣を長く楽しめる事につながります。
[s_ad]これ即ち退色にはお化粧が一番
本当に真っ黒にしたければ再塗装する事をお勧めしますが、労力と成果が見合いません。実際私も天板や要所のサビや塗装の浮きは、ブラッシングしてから再塗装をしていますがそれは「小さなポイント」のみです。今回の様なストーブ全体の退色には不向きです。
そこで…
油を塗りましょう。
おいおい…油かよ、スキレットみたいに油でヌルヌルになるでしょ…と思いますね。
断言します、なりません。
そこまで塗りませんし、最終的にはなんとなく「しっとりしている」程度に仕上がります。それでは今回は汚れと退色が進んでいる天板を例に、実際の工程をお伝えしていきます。
①物理的な汚れを取る。

最終的には油を塗りますので、その前に焦げ付きや調理時の汚れを事前に取り除きましょう。これ自体は自宅にある柔らかいスポンジでもなんでも構いません、土台を綺麗にする事が目的です。焦げやら、汚れと灰がくっ付いてしまった物などなど…天板調理を行うと結構汚れていきます。
②化粧箇所の脱脂を行う。

物理的な汚れを取りましたら、次は脱脂を行います。脱脂なんてカッコつけて書いてますが「食器用洗剤等で油汚れを落とす」だけです。
私のオススメは泡立ちが少ない「アルカリ電解水」です。食器用洗剤でも良いのですが泡立ちが良すぎて、拭き取るのがすごく大変です。そこで、アルカリ電解水です。全然泡立ちませんがスプレーした箇所の汚れや油が溶け出して落ちていくアレです。
拭き取りも簡単ですし、直接スプレーできるので非常に便利。食器用洗剤を使う場合は、適量水で薄めたものに雑巾を浸して吹き上げる様に使用すると良いかと思います。上の写真は物理汚れを落とした後、脱脂をした写真です。だいぶ綺麗になっています。
実はこの時、先にドアの縁を処理してしまいまして…上の写真、妙に手前側が綺麗で真っ黒だと思いませんか?これくらい綺麗になります、見違えますよ。

脱脂するだけでもそれなりには綺麗になるのですが、退色ばかりはどうにもなりません。また、調理時についてしまった油汚れは「取れない」と思って諦めましょう。鋳物の細かく隆起した凹凸と素地に良くも悪くも馴染んでしまうので取りきれません。それくらい、鉄と油は馴染みが良い物なのです。
また、ちょっと脱線しますが「鳥皮油」にはご注意を。鶏肉を天板調理する際には油だけならまだいいですが、鳥皮+油が合わさったものが付着するとまず取れません。鳥皮のゼラチン質と油が合わさった物が熱々の天板に溢れると「膠(にかわ)」のようにベタベタの焦げ油状になってしまい、シミが出来てしまいます。
濡れたままだと、次の工程へ進めませんので乾燥させます。特に時間の指定はないのですが表面が濡れていなければ概ね問題ないと思います。心配であれば一度ストーブを焚き付けて乾燥させても良いでしょう。
③油を塗り込む。

さて、いよいよ油を塗っていきます。
なにも難しくありません、キッチンペーパーやパルプウエスなどに薄く油を染み込ませて、細かく円を描く様にストーブ本体へ擦り込んでいきます。多少多めに付けてしまっても、この後の工程があるのであまり気にしなくてもいいかもしれません。ただ、最初から適量を目指す方が後々良い事があります。
油の種類は新しい油であれば何でも良いです。オリーブオイルなんかだと安心できる気がしますが根拠も何もありません。私は今回オリーブオイルを切らしていたため、サラダ油で代用しました(笑)
④乾拭きする。
文字通り、油を塗り終わりましたらその箇所の乾拭きを行いましょう。コツはキッチンペーパーやパルプウエスで「押さえる」ように余分な油を吸い取るイメージです。自分自信のテカリを抑えるために、おでこや頬にあぶらとり紙を使う感じで行うと良いでしょう。
⑤最後にストーブを通常運転。
後はいつもストーブを使う様に焚き付け、運転していきましょう。と、いうのもストーブを熱する事で余分な油が揮発して飛んでいきます。あれ?何かこの流れ知っているな…そう、シーズニングです。鋳物の調理器具などのメンテナンスとして行うものですがあれと全く同じ工程ですね。
ここで注意点が、それは…
部屋が油臭くなります!
余分な油が飛んでいくので仕方ない事なのですが、この際先行した「油の塗り込み時」に多めの油の量を塗り込んでしまったり「乾拭き」が足りないと…すごい油臭くなります。
換気扇を回すしかないのですが、殆どの家庭ではストーブ近辺に換気扇はないでしょう。なので、ストーブ運転後に換気するか、換気しながらストーブを点けるかが良いです。できればこの作業は換気しながらをオススメしたいので「春秋」を目安に行うと良いかもしれません。真冬だと換気するだけで家の中が超冷え込んじゃいますからね…
また、一気にストーブ全体を処理するのではなく、小さな部位ごとに少しずつ日を分けて行うのが一番良い結果になります。ほんと揚げ物した直後みたいなニオイになります。
と、いう事でストーブに熱が加わり余分な油が飛んで馴染んで、その姿は設置当初の様に真っ黒になっている事でしょう。
まとめ
- 紫外線の影響で遅かれ早かれ退色する
- 化粧の意味で油を塗布すると綺麗になる
- 部位ごとに分けて作業すると良い
- 作業後はストーブに点火すべし
- 部屋が油臭くなるので注意
と、対処療法に近い部分はありますが実際の全塗装を行うよりも、はるかに手頃で、簡単に退色したストーブを設置当初のような輝きにする事が出来ます!最終的にはしっとりしたお肌の様に仕上がりますので、油ギトギトにはなりません。皆さんの薪ストーブメンテナンスの参考になれば幸いです!
それでは良い薪ストーブライフを!(挨拶)